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ロンドンブックフェアに行った話

シェフィールドという、イギリスのまんなかあたりにある都市から電車でロンドンブックフェアに行ってきました。

ロンドンブックフェアに参加するには参加証が必要なのですが、わざわざ事前に印刷しなければならず(写真のような名札入れに入れるので)、わたしはRymanというイギリスのどこにでもある文房具店で当日の朝に印刷しました。計画性がないです。


オンラインで印刷を注文できるのですが、たった1枚の紙に3ポンド弱かかり、あほらしい気持ちを抑えつつシェフィールド駅に向かいました。イギリスにはコンビニがないので気軽に印刷できません。たぶん個人経営のお店などで印刷できるんだろうなと思いますが、いい方法を知っている方がいましたら教えてください。地味に困ります。


上の写真は、ロンドンに向かう途中で目にした巨大な発電所です。ものものしい雰囲気で圧迫感がすごいです。きっと夜に見たら怖いだろうなと思います。

ロンドンに着いたら、雨が降っていました。雨の日がなによりも嫌いなのにどうしてイギリスに住んでいるんだろうとたまに考えます。

会場のオリンピアはロンドンの中心部から電車で40分ほどの場所にあり、高級住宅地として知られるチェルシー(Chelsea)などが近いです。

こちらは会場の入り口。小さいので本当にここから入っていいのか悩みしばらくうろうろしていました。


会場に入ると、たくさんの出版社のブースがずら~っと並んでいました。いつかうちの父の付き添いで参加したデンタルフェアに似ているな、と思いつつ見て回りましたが、あちこちで商談が行われており雰囲気に圧倒されました。部外者感がすごかったです。


会場はとても暑かったです。荷物を預けられる場所はありましたが、面倒なので脱ぎ着しやすい服装で行かれることをおすすめします。

児童書のエリアもあり、こんなかわいいブースも。


ちょっと気になった絵本。

わたしは特に誰かとミーティングをする予定もなかったので、セミナーに参加することに。Writing the Same Text Twice? Bilingual Poets and Self-translationと題されたセミナーを立ち聞きで少しだけ聞きました。

自己翻訳については『ナボコフ 訳すのは「私」―自己翻訳がひらくテクスト』という秋草俊一郎先生のご著書がありますが、あまり日本では話題にならないテーマでしょうか。登壇していたのはヨーロッパ言語の詩人・翻訳者の方々だったので、多言語を話すのが当たり前の地域では議論になりやすいのかなぁと思ったり。

日本語と英語のように、文法もなにもかもかけ離れているような言語どうしでは詩の翻訳は特に難しいと思いますが、作者本人が訳すとどんな変化が起こるのか興味があります。いつか大学のゼミでボブ・ディランの歌詞を訳したことがありますが、どうにもかっこ悪い感じになってしまったことを思い出します。

絵本の翻訳でも、登場人物たちに歌とか歌われたり、リズミカルに韻を踏まれたりすると困ります。

アーロ ねむれないライオン』を訳したときは、フクロウさんが歌ばっかり歌うので困りました。『きみのうたをきかせて』でも、いろんな動物がいろんな歌を歌っていて、かなり困りました。

韻に気を取られすぎると不自然な訳になりがちで、うまく意味の部分とリズム感のバランスを取るのがやっぱり難しいです。わたしは類語辞典を引いたり、母音が同じ言葉を調べたりしてただただ一生懸命考えて訳しています・・・

ダジャレとか得意な人は向いてるのかもしれない、ですが、あまり凝りすぎても自己満足になりがちなのでバランスが難しいなぁ、と思います。

お昼を過ぎたので、会場近くの「Samad Al Iraqi Restaurant」というイラク料理のお店へ。イラク料理ってどんなんなんだ、と気になったので。

夕方近かったのでお客さんが誰もいませんでしたが、ものすごくおいしかったのでおすすめです。


イギリスは外食すると高いですが、そのぶん量も多く、食べ残しを持ち帰れるので少しお得感はあります。

会場に戻り、Local Books, Global Trends: International Book Markets in 2023というセミナーを聞きました。


どの本がどの国で売れているのか、どんな傾向があるのか、といったブックデータに関するプレゼンテーションでした。

どんな本が選ばれ、訳されるのかは翻訳のイデオロギーとか政治性とかいった問題に関わってきますが、そのようなテーマについてはローレンス・ヴェヌティが20年以上前に提起していました。

ヴェヌティの著書は『翻訳のスキャンダル 差異の倫理にむけて』という題で最近日本語訳が出ましたが、日本に関しては吉本ばななさんの『キッチン』を例に論じていた章があり、わたしも大学院のエッセイで取り上げました。

訳されるものによって日本文学のステレオタイプが作り上げられたり、出版社の意向によってイメージが歪められたり・・・と、翻訳はただ文字を移し替えるだけではなく多方面に影響を及ぼす可能性があるのですが、そのあたりはあまり日本で意識されていないように思います。

セミナーが終わると、会場を出てTubeに乗り、セント・パンクラス駅からEMR(East Midlands Railway)という電車でシェフィールドに向かいました。

イギリスの電車はTrainlineなどのアプリで事前に予約する必要があり、基本的には予約した席のところに座ります。

チケットによっては席が予約されない場合があるので、その場合は「Available」と書いてある席に座るのですが、今回そのAvailableに座っていたところ、その席を予約しているという人が現れ通路に立つ羽目になりました。

ときどきダブルブッキングがあったり、予約システムがうまく連携されていなかったりすることがあり、イギリスの電車は適当だなぁと思わざるを得ません。

ということで、初ロンドンブックフェアが終わりました。次の日も行く予定でしたが、疲れ果てたので見送りました。来年も行けたらいいなぁ・・・とぼんやり思っていますが、来月の予定も立たないままふらふら生きている身なので先のことはなにもわかりません。

次回はボローニャブックフェアの様子をお届けしたいと思います。